【滋賀・長浜|江北図書館】120年もの時を超えて、本を愛する気持ちを育む
「未来を支える子供たちと地域に暮らす全ての人の、文化向上に役立てたい」。明治35年(1902年)、長浜市余呉町出身の弁護士・杉野文彌氏が私財を元手に立ち上げた「杉野文庫」を前身に、いまなお滋賀県最古の図書館として愛され続ける「江北(こほく)図書館」。2024年にはクラウドファンディングを経て、図書館と人をつなぐ新館「Lib+(リブプラス)」が誕生しました。
今回は、第二次世界大戦や市町村合併といった時代の波に翻弄されながらも、木之本の地で学びの場を提供し続ける「江北図書館」の魅力をご紹介します。
目次
貴重な書籍のお宝を、日常で読める幸せ
JR北陸本線「木ノ本」駅から徒歩約1分。地元の人々が気軽に立ち寄りやすい便利なロケーションに、本記事の舞台である「江北図書館」があります。
「現在多くの図書館は国や自治体によって運営されているものがほとんどですが、江北図書館は全国でもわずか18ヵ所しかない私設図書館。さらに明治39年(1906年)設立とその歴史は古く、滋賀県では最古・国内でも3番目に歴史が長い私設図書館と言われています。」
「江北図書館」への熱い思いを語ってくださったのは、館長を務める久保寺容子さん。朗らかで親しみやすい久保寺さん。どの本に関しても造詣が深く、内容を解説してくださる時のキラキラとした表情が、なんとも印象的な方です。今回の取材に関しても、「江北図書館が広まるきっかけとなれば」と、快く引き受けてくださいました。
現存する「江北図書館」の建物が造られたのは、昭和12年(1937年)。アーチ型の窓と白壁が趣深い図書館は、1階に絵本や児童書が愉しめる「児童室」とこの後詳しくご紹介する「貴重図書収蔵室」、2階には展示室を兼ねた「昭和の図書室」が設けられています。
「江北図書館は蔵書数約45,000冊と小規模ではあるものの、創設者である杉野文彌氏が所有していた本をはじめ、書架には明治~昭和期の書籍を数多く取り揃えています。また書庫には、江戸時代の書籍や地域資料も多数保管しています」。
久保寺さんの言葉に促されるまま「貴重図書収蔵室」の棚を覗くと、希少な蔵書がずらり。夏目漱石の代表作『吾輩は猫である』の初版本や日本で初めての近代的国語辞典とされる明治期の『言海』、早稲田大学の文芸誌『早稲田文学』の創刊号、14世紀のイタリア文学を代表するジョヴァンニ・ボッカチオ作『デカメロン』の和訳版など、“知の集積”と呼ぶにふさわしいラインアップです。
「江北図書館が所蔵している『ブリタニカ百科事典』は第9版で、日本で最初に入ってきた英国の百科事典です」「明治期の国語辞典『言海』の語釈は編者の主観によるものが多く、例えば“あわび(あはび)”の説明には“味・美なり”なんて書いてあるんですよ」といった、久保寺さんによる本の解説も、興味深いものばかり。
本来であれば、これほど貴重な書籍は厳重に保管されるもの。しかし「江北図書館」ではあえて、人々の目に触れる棚に置かれているそうです。
「本は誰かに読んでもらって、初めてその力を発揮するもの。紙の手触りや書体も、当時の息遣いを知る大切な手がかりです。だからこそ、本物を手に取って読んでもらうことに意味がある。そんな思いから、どの時代の本も基本的に、図書館スタッフにお声掛けいただければ、来館者の皆様にも自由に読んでもらえるように棚作りをしています」。
所蔵されている本の中には、何度も読まれるうちに表紙が傷んでしまったり、綴じが外れてしまったものも。「江北図書館」では少しでも本を長持ちさせるために、本の表紙を新たに作り本来の表紙を扉絵として保存したり、本の角や背表紙を修復・補強したりと、保存活動にも力を入れているのだとか。一冊一冊、慈しむように手入れされた本に触れながら、知的好奇心を満たす極上のひとときをお過ごしいただけます。
「貴重図書収蔵室」の向かいにある「児童室」には、絵本や児童書、図鑑など、子供たちの読書心をくすぐる書籍が揃い踏み。『ハリーポッター』や『指輪物語』、アンデルセン&グリム童話、『シャーロック・ホームズ』シリーズなど世代を超えて愛される名作が出迎えてくれます。
「児童室」では、子供たちの本の世界を広げる特集コーナーも展開されています。取材日には『からすのパンやさん』『だるまちゃんとてんぐちゃん』など数々の名作を生み出した“かこさとし”先生特集や、
里山の撮影をライフワークとする滋賀県大津市出身の写真家・今森光彦氏の著書特集をされていました。
親御さんが昔好きだった本をお子様と一緒に愉しんだり、本をきっかけに新たな場所におでかけしてみたり。「読書を通じて子供たちの興味の幅が広げられるように」と考える、久保寺さんたちの子供たちへの思いがあふれています。
室内には子供たちが自由に読書や勉強を愉しめるスペースや、小さなお子様でも座って読書を愉しめるかわいい椅子もスタンバイ。いつか思い出の本になる、お気に入りの一冊を見つけてくださいね。
フォトジェニックな展示室で、好きな本の世界に浸って
貴重な書籍を堪能した後は、2階の展示室へ。文庫本の棚が並ぶ入口横の細い廊下を抜け、陽光降り注ぐ階段を上がると、目の前になんともノスタルジックな光景が広がります。
高級感のある“格天井”を施した空間は、天井が高く非常に開放的。格天井には音を吸収する効果もあり、読書に集中できる静けさも魅力です。
レースのカーテンが揺れるアーチ形の窓や年季の入った本棚を見ていると、まるでタイムスリップしたような気分になります。
こちらのフロアに置かれているのは、昭和時代に発刊された書籍がほとんど。レトロな椅子やソファーに身をゆだねると、何時間も本の世界に没頭してしまいそう…。
傍らには明治の頃、図書の運搬に使われていた巡回箱や当時使われていたカード目録棚が展示されています。
「地域の人々に本を届けたい」という、江北図書館や木之本の思いが垣間見えるので、ぜひ注目してみてくださいね。
江北図書館を応援する気持ちが生んだ新館「Lib+(リブプラス)」
創業以来、数えきれない人々の知的好奇心を満たしてきた「江北図書館」ですが、近年“建物の老朽化”が問題視されています。
「築85年を超える建物は外壁のひび割れや床の傷みなどが激しく、トイレ等の設備が整っていませんでした。今後大幅な修繕が必要となってくるものの、私設図書館では資金集めがままならないもの。『このままでは安全な図書館運営ができない』と考えた私たちは、クラウドファンディングを始めました」。
久保寺さんたちの熱い思いは支援者たちの心を動かし、クラウドファンディング以外の寄付金も集まったことで、目標である1,500万円を大きく上回る2,100万円以上の資金集めを達成。「江北図書館」の修繕と共に、来館者の憩いと交流の場となる新館「Lib+(リブプラス)」を建設しました。
「Lib+(リブプラス)」では滋賀県や長浜市に関する本を展示したり、地元で活動を続ける作家さんたちが手掛けた小物を販売しています。
「運営は1951年の開業から木之本でおいしいパンを作り続ける、『サラダパン』でおなじみの「つるやパン」さん。「Lib+(リブプラス)」ができる経緯やコンセプトをお伝えした所、二つ返事で快諾してくださいました」。
「Lib+(リブプラス)」では「つるやパン」の人気メニューやオリジナルメニューを愉しめる「つるやカフェ」も併設。マヨネーズで和えた刻みタクアンをたっぷり挟んだ『サラダパン』をホットドッグに仕立てた『サラダパンドッグ』は、お店の看板商品。ジューシーなソーセージの塩気とマヨネーズの酸味との相性が抜群で、タクアンのシャキシャキ感が良いアクセントに。焙煎士の店長さんこだわりのコーヒーやカフェオレとご一緒にどうぞ!
3種の揚げパンを1本で愉しめる『まるまるパン』は、お子様にも大人気!3つの味は季節によって変わり、揚げたてを味わうことができますよ(取材日にいただいたお味は、いちご・きなこ・抹茶でした)。
また「Lib+(リブプラス)」開館記念に、「江北図書館」と「つるやパン」を題材にして作られた絵本『パンやのポポさん』に出てくる『おうちパン』も商品化。「絵本に出てくるパンを食べられる」と、小さなお子様のいるご家族を中心に、話題を集めています。
ポポさんのイラストがキュートなトートバッグも販売されているので、お買い物のお供にいかがですか?
古き良き時代を感じる「江北図書館」で、かけがえのない一冊との出会いを
遠い過去にタイムスリップしたかのような趣ある空間、時代を超えて人々の手に渡り知識を育んできた数多の書籍、図書館と地元を思う気持ちから生まれた新たな世界…。およそ120年前、木之本で生まれた「江北図書館」は少しずつ形を変えながらも、創設当時と変わらぬ理念を以って、来館者たちの学びの場となっています。
「GFC奥琵琶湖レイクシア」から「江北図書館」までは、県道557号と国道303号を経由し約25分。周辺には歴史的観光地として名高い「木之本宿」や、目の仏様としてご利益のある「木之本地蔵院」といったおでかけスポットもございます。
電車であれば永原駅から湖西線に乗り、新快速で近江塩津駅で北陸本線に乗り換え、木ノ本駅へ。駅の東口を降りてすぐ目の前にありますので、立ち寄りやすい点も魅力です。
「江北図書館」は読書好きの方はもちろん、活字が苦手な方でも、あっと驚く一冊との出会いが待っているはず。滋賀・長浜にお越しの際には、知的好奇心を満たす読書旅にチャレンジしてみませんか?
GFCのリゾートに興味がおありの方は、以下から気軽にお問い合わせください。無料で資料をお送りいたします。