兵庫県・日本酒でめぐる、灘五郷の酒蔵へ
灘五郷(なだごごう)は、兵庫県神戸市灘区から西宮市にかけて広がる日本有数の酒どころです。神戸市灘区の西郷(にしごう)、神戸市東灘区の御影郷(みかげごう)、魚崎郷(うおざきごう)、西宮市の西宮郷(にしのみやごう)、今津郷(いまづごう)となっています。
灘での酒造りの歴史は古く、室町時代にはすでに始まっていたという記録があります。今もたくさんの酒蔵がありますが、各郷から1つずつの酒蔵をご紹介いたします。
目次
西郷・灘本流の酒造り「沢の鶴資料館」
神戸市灘区にある「沢の鶴資料館」は、阪神電車「大石駅」から南へ徒歩約10分の場所にあります。
300年の歴史を誇る灘の酒蔵「沢の鶴」は、もとは米屋が始めた酒造業。「米を活かし、米を吟味し、米にこだわる」という理念のもと、丹波流の醸造技術で米本来のうま味を引き出す製法を300年間守り続けています。江戸時代末期に建造された大石蔵の造りを活かした「沢の鶴資料館」は、昭和53年に開館した日本酒の伝統と文化を伝える資料館です。
「沢の鶴資料館」は、かつての酒蔵をそのまま利用しており、兵庫県の「重要有形民俗文化財」に指定されています。館内には、酒造りの道具およそ180種類・2,800点以上、江戸時代の輸送船(千石船、樽廻船、菱垣廻船の模型)などが展示され、灘の酒造りの伝統と技術を学べます。
170年以上の歴史を有する大石蔵は、阪神淡路大震災により全壊しましたが、平成11年3月に再建されました。再建の際に発見された珍しい地下構造の槽場(ふなば)跡、直径2m30cm、深さ1m95cmに及ぶ大桶、江戸へ酒を輸送した樽廻船の模型等、貴重な資料が発見され、これらを通じて灘の酒造り文化が現代に継承されています。
ミュージアムショップでは、入手困難な銘酒の購入に加え、酒蔵特有の生原酒の試飲も可能です。
「沢の鶴」のこの1本|上撰本醸造沢の鶴
灘の本格清酒である『上撰本醸造』は、冷やでも燗でも愉しめるさわやかな後味が特徴です。輪郭のはっきりしたふくらみのあるうま味と深いキレを持ち合わせ、幅広い料理との相性が良いです。
◆沢の鶴資料館
住所:657-0852 兵庫県神戸市灘区大石南町1-29-1
電話番号:078-882-7788
営業時間:10:00~16:00(最終入館も16:00まで)
休館日:毎週水曜日(祝日の場合は開館)、お盆(8月中旬1週間)、年末年始
入館料:無料
公式サイト:https://www.sawanotsuru.co.jp/site/company/siryokan/
御影郷・酒造りへの並々ならぬ思い「菊正宗酒造記念館」
神戸市東灘区の「菊正宗酒造記念館」は、JRの場合「住吉駅」より六甲ライナーに乗換、「南魚崎駅」下車し北西へ徒歩2分、阪神電車の場合は阪神「魚崎駅」下車し住吉川沿いを南へ徒歩10分です。魚崎にありますが、灘五郷としては御影郷に入ります。
全国的に知られ、人気のある日本酒「菊正宗」は、約360年前の創業以来、兵庫県産の希少な山田錦と地下水・宮水を使用し、高品質な日本酒を造り続けています。
「菊正宗酒造記念館」は、「酒造りの原点を知る」をテーマに、江戸時代から続く酒造りを学べる施設です。ここでは、丹波杜氏に伝わる生酛造りの製法や、蔵人たちの仕事の様子を体感できます。
約1400平方メートルの展示場には、国の重要有形民俗文化財である“灘の酒造用具”をはじめ、一枚板の大看板、巨大な美人画、珍しい酒器など、貴重な資料が数多く展示されています。きき酒コーナーでは、加熱処理をしていない「生原酒」など、季節に合わせた日本酒を試飲できます。有料試飲のコーナーもあります。
また、予約制の『樽酒マイスターファクトリー』が併設されており、容器びん誕生50周年を記念して設立されました。ここでは、職人の手による酒樽作りを見学しながら、日本の伝統である樽酒への理解を深めることができます。
「菊正宗」のこの1本|菊正宗極上本醸造
兵庫県産山田錦を100%使用、シャープな口当たり、生酛造り特有のコクと深い味わい、すっきりした後味が特徴です。旨味とキレのバランスが良く、食中酒に最適です。特に上燗で真価を発揮する灘の生酛辛口で、心地よい余韻が愉しめます。
◆菊正宗酒造記念館
住所:658-0062 兵庫県神戸市東灘区魚崎西町1-9-1
電話番号:078-854-1029
営業時間:9:30~16:30
※団体のお客様はご予約ください。※年末最終日は閉館時間が変更になる場合がございます。
休館日:年末年始
入館料:無料
公式サイト:https://www.kikumasamune.co.jp/kinenkan/
魚崎郷・辛口で生粋の灘酒「小山本家酒造・灘浜福鶴蔵」
神戸市東灘区魚崎南町の「小山本家酒造・灘浜福鶴蔵」は阪神電鉄「魚崎駅」から徒歩10分、JRの場合「住吉駅」より六甲ライナーに乗換、六甲ライナー「南魚崎駅」より徒歩10分です。
六甲山の天然水を使用し、辛口ながらも日本酒の伝統と文化を守り続けるという強い思いが込められたお酒は、生粋の灘酒として地元で深く愛されてきました。阪神淡路大震災で大きな被害を受けたものの、被災翌年には「造る・見せる・販売する」の三要素を備えた見学可能な酒蔵として再建されました。平成8年に再建された酒蔵では、酒造りの体験ができ、ガラス越しに見学することも可能です。
飲み比べやきき酒コーナーもあり、好みの銘柄をセレクトしたり、お土産選びにも最適です。
一年を通して酒造りを行う四季醸造により、常に新鮮な日本酒を提供しており、毎月第3日曜には浜福鶴蔵マルシェが開催され、生原酒の試飲会や地元の食材などが販売されます。
「小山家酒蔵」のこの1本|空蔵 純米吟釀
兵庫県産の山田錦と六甲山系の仕込み水を使い、伝統的な生酛造りで醸された、ほどよい酸味とうまみが特徴の純米大吟醸です。
◆小山本家酒造・灘浜福鶴蔵
住所:658-0025 兵庫県神戸市東灘区魚崎南町4丁目4番6号
電話番号:078-411-8339
営業時間:10:00~17:00(有料きき酒処ラストオーダー16:15)
休館日:月曜日(但し祝祭日は営業)
入館料:無料
公式サイト:http://www.hamafukutsuru.co.jp/
西宮郷・350年の歴史「辰馬本家酒造 白鹿クラシックス」
西宮市の酒蔵通りから1本南の「辰馬本家酒造 白鹿クラシックス」は、阪神「西宮駅」から徒歩約17分の場所にあります。
兵庫県を代表する日本酒『白鹿』は、「辰馬本家酒造」が江戸時代初期から造り続ける銘酒です。幕末には“灘の銘酒”としての地位を確立し、現在に至るまで五代にわたりその伝統が受け継がれています。
『白鹿』の人気の理由は、六甲山系の湧き水である“宮水”と、地元兵庫県産の酒米・山田錦という自然の恵みにあります。ミネラルが豊富で鉄分の少ない宮水と、良質な米、そして冬の厳しい気候が、この高品質な日本酒を生み出します。特に、大正時代に誕生した高級酒『黒松白鹿』は贈答品としても親しまれています。『黒松白鹿上撰』は、飲み飽きしないすっきりとした味わいの本醸造酒で、2016年にリニューアルオープンした「白鹿クラシックス」では、旬の料理とともに愉しめます。
「白鹿クラシックス」は、“花と料理と日本酒と”をテーマにしたレストランとショップを併設しており、ショップでは蔵元直送の限定原酒や生酒、量り売りなどが提供されています。
「辰馬本家酒造」のこの1本|黒松白鹿上撰純米吟醸
五味(酸味、苦味、甘味、辛味、塩味)のバランスの良さとのど越しが特徴で、飲み飽きない純米吟醸造酒です。『白鹿』の名には長寿の願いが込められています。
◆白鹿クラシックス
住所:662-0926 兵庫県西宮市鞍掛町7-7
電話番号:0798-35-0001
営業時間:ランチ|11:00~15:00(LO14:30)ディナー|17:00~21:30(料理LO20:30、飲物LO21:00)
定休日:月曜日・火曜日※火曜日が祝日の場合は翌日休業
公式サイト:https://www.cfs-japan.com/brands/hakushika-classics/shops/nishinomiya/
隣接する「白鹿記念酒造博物館(酒蔵館)」は、明治2年築の旧辰馬本家酒造本蔵を利用し、伝統的な酒造工程を見学できます。酒造りの映像や唄の視聴、道具に触れる体験を通して、酒造りを学べます。
◆白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)
住所:662-0926 兵庫県西宮市鞍掛町8-21
電話番号:0798-33-0008
開館時間:10:00~17:00(入館は16時30分まで)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日、連休に含まれる場合は連休明け休館)、年末年始・夏期休暇
公式サイト:https://sake-museum.jp/
今津郷・丹波杜氏の手作業を受け継ぐ「大関・関寿庵」
西宮市今津にある「大関酒造」は、阪急・阪神「今津駅」より徒歩約9分、阪神「久寿川駅」より徒歩約8分です。
灘五郷の最も東に蔵を構える「大関株式会社」は、江戸時代中期の1711年、初代大坂屋長兵衛が今津で清酒醸造を始めたのが起源です。1964年の東京オリンピック開催年に発売された『ワンカップ大関』は、広く知られるロングセラー商品です。また、創醸310周年を記念して発売された『創家大坂屋』は、創業時の精神を今に伝えるブランド酒として造られました。
伝統の丹波杜氏による手作業の酒造りを守りながらも、最高の素材と新しい技術を融合させることで、「大関」最高品質の日本酒ブランドが確立。『創家 大坂屋 純米大吟醸』は、“ワイングラスでおいしい日本酒アワード2022”で金賞、“ガラスびんアワード2022”で最優秀賞を受賞しています。寿司や肉じゃがとの相性が良いとされています。
「魁(さきがけ)の精神」をモットーに、常に時代のニーズを捉えた新しい酒造りに挑戦し、発酵技術を活かした加工食品や化粧品などの開発も手掛けています。
アンテナショップの「甘辛の関寿庵」では、大関ブランドのラインアップがひと通り揃うほか、お酒に合うフードや酒粕を使用したお菓子などを販売しています。有料試飲コーナーでは「大関」の様々な銘柄の日本酒を取り扱っており、中にはここでしか手に入らない蔵元直送の“しぼりたて生原酒”の量り売りもあります。
店内には喫茶コーナーがあり、購入した銘菓を気軽に味わうことができます。酒饅頭を練り込んだソフトクリームや甘酒などのメニューも愉しめます。
毎年10月に開催される『西宮酒ぐらルネサンスと食フェア』は、西宮の日本酒文化に触れ、日本酒を愉しむイベントです。西宮神社では、市内の各酒蔵が日本酒の販売や有料試飲を行います。
このイベントは、西宮酒ぐらルネサンスと食フェア実行委員会(西宮商工会議所、西宮市、西宮酒造家十日会、にしのみや観光協会)が主催しています。「大関」では、酒ぐらルネサンスと連動したイベントとして『魁Bar』があります。「大関酒造」の社員食堂が開放され、社員がホストとなってお客をもてなしています。
◆甘辛の関寿庵
住所:663-8227 兵庫県西宮市今津出在家町3-3
電話番号:0798-32-3039
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜日、1/1~1/3
公式サイト:https://sekijuan.ozeki.co.jp/
「大関」のこの1本|創家 大坂屋 純米大吟醸
兵庫県産の山田錦を100%使用した、華やかで落ち着いた吟醸香と、しっかりとした旨みが特長の日本酒です。常温はもちろん、冷蔵庫でよく冷やして飲むのもおすすめです。
◆大関株式会社
住所:663-8227 兵庫県西宮市今津出在家町4-9
電話番号:0798-32-2111(代)
※一般的には工場などの公開はしておりません。
日本酒ショップ情報|神戸・北野ノスタの「灘五郷 SAKE VILLAGE」
「神戸北野ノスタ」は旧北野小学校をリノベーションしてオープンした複合施設で、有名なコーヒー店やチョコレート専門店など、神戸のグルメを愉しめるスポットとして注目されています。
神戸北野ノスタ内に新設された「灘五郷 Sake Village」は、灘五郷の日本酒を一度に愉しめる酒蔵横丁のようなアンテナショップです。灘五郷の多くの有名酒造メーカーの商品が集結しており、日本酒愛好家から初心者まで、誰もが満足できる品揃えを誇ります。
ここでは、テイスティングをして好みの銘柄を選べるため、贈り物にも最適です。20以上の酒蔵の日本酒を少量から試飲でき、様々な蔵の味を比較しながら、お気に入りの一本を見つけることができます。好みを伝えれば、おすすめを教えてもらい、試飲も可能です。
入口近くの丸テーブルでは、季節のテーマに合わせた日本酒を紹介しています。秋から冬にかけて造られる「灘の生一本」の代表的な8社の銘柄も展示されています。
この施設は灘五郷の酒蔵巡りの起点となることも目指しており、酒蔵巡りのマップやパンフレットも用意されています。また、日本酒に合うおつまみや地元食材を使った料理も提供しており、酒ソムリエの説明を聞きながら愉しむことができます。
◆灘五郷 SAKE VILLAGE
住所:650-0004 神戸市中央区中山手通3丁目17-1
電話番号: 078-855-5200
営業時間:10:00~18:00
定休日:年末年始
公式サイト:https://kobekitano-nosta.jp/shop/nadagogo/
地元の名酒に出会う 酒蔵めぐりの旅
灘五郷は、日本酒造りに適した米と水に恵まれた土地です。米、水、そして気候や土壌のわずかな違いが、酒の味わいに多様性を生み出します。
酒蔵は長い歴史の中で、その土地の原料と風土を生かした酒造りを行ってきました。蔵の数だけ異なる味わいがあると言えるでしょう。
職人が米や酵母と対話しながら酒を醸し、その対話から生まれた日本酒は、また人々の対話を生み出します。一本の日本酒には、その土地の歴史や、酒造りを支える多くの人々の思いが込められていることがわかります。
酒蔵を巡る旅は、人と土地の風土が織りなす唯一無二の美酒との出会いを求める旅です。ぜひ、GFC淡路島グランデシアから兵庫・灘の酒蔵めぐりへ出かけてみてください。
※お酒は20歳になってから
※飲酒運転は法律で禁止されています
※妊娠中や授乳時の飲酒は、胎児・乳幼児の発育に悪影響を与える恐れがあります