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湯の山スパシア周辺情報

三重・湯の山の“体感型”ミュージアム「菰野ピアノ歴史館」

古典派・ロマン派時代のピアノを「観て・触って・弾いて・聴く」

「湯の山スパシア」のある三重県菰野町に2021年10月オープンした「菰野ピアノ歴史館」。今から100年〜200年前の古典派・ロマン派の時代のピアノなどが30台近く展示されています。

このミュージアムのすごいところは、展示されているピアノはすべて一流の技術を持った調律師が修復し、当時の音色を復活させたものであること。来館した人はそうしたピアノをただ観たり、触れたりするだけでなく、自らの手で弾いて、ベートーベンやショパンが耳にしていた音と同じ音色を奏でることができるのです。

古典派・ロマン派時代のピアノがズラリ

館内に展示されているピアノは約30台。入口で出迎えてくれるのはショパンが愛した「プレイエル・ピアニーノ」(仏・1865年製)。さらに、ベートーベンが愛用したピアノと同型の「シュトライヒャー」(オーストリア・1871年製)や「ジョン・ブロードウッド」(英・1822年製)、ドビュッシーに「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」と言われた「ベヒシュタイン」(独・1905年製)や、19世紀中頃の「スタインウェイ」のスクエアピアノなど錚々たるアンティークピアノの数々が並んでいます。

そうした古典派・ロマン派の時代のピアノが当時どのような音を奏でられていたのか、自分で弾いて確かめてみたいという人は受付に声をかけた上で3分間演奏することができます(※古典ピアノは扱いに細心の注意が必要となるため、一定の経験者以上が対象になります)。ピアノに心得のある人には堪らない世界。YouTubeやTikTok 、Twitterに自分が演奏した映像をアップしている人が多いというのも頷けます。古典ピアノ以外のピアノでしたら、誰でも軽く触れたり音色を確かめたりと自由に楽しめます。

40年近くにわたって各年代のピアノを収集


他に類を見ないようなピアノミュージアムはどのようにして誕生したのでしょうか。
館長を務める岩田光義さんはピアノ調律師を育てる「中部楽器技術専門学校」(1980年開校)で長年調律師として運営に携わってきました。「菰野ピアノ歴史館」の建物は合宿など学校の研修所として使われていた場所。しかし、コロナ禍の影響で研修が難しくなり、合宿所は閉鎖されることに。

岩田さんは40年近くにわたって研修用に年代物のピアノから近現代の作品までさまざまなピアノを収集していました。訪欧時に知り合った楽器商から宮殿に所蔵されていたピアノがオークションに出品されるという情報を得て入手したり、ミュージアムの統廃合によって行き場を失ったピアノを引き取ったりしていたそうです。そうして収集してきた貴重なピアノの数々をこのまま埋もらせてしまうことのないようにと、調律師の仲間たちと協力して修復・復元し、「菰野ピアノ歴史館」を立ち上げたのです。

工房で調律師たちが修復作業にあたる姿も

オークションなどで入手した100年前、200年前のピアノは当時の姿は保っているものの音の出せる状態ではないものがほとんど。「菰野ピアノ歴史館」には工房が併設されており、調律師たちが修復作業にあたっています。

「当時と同じ弦や部品を使うことで、同じ音を再現することができるのです」と館長の岩田さん。
自身のネットワークを駆使して、製作当時と同じ弦などを探して取り寄せています。困難なのは、録音機などない時代だけに、当時の音が残されていないこと。その時代の文献や楽譜の横に記された表現などを頼りに同じ音を再現するための努力を重ねていると言います。

来館者が工房に自由に出入りして調律師たちの作業の様子を自由に観ることができるのも「菰野ピアノ歴史館」の魅力。ピアノの詳しい仕組みを知りたい人には調律師が丁寧に説明してくれます。

展示されている年代物のピアノは非常にデリケートに出来ているため、来館者たちが触れたり弾いたりすることで音が微妙に狂ってしまうこともあるとのこと。閉館後、毎日のように調律や修復作業を行っているそうです。触って、弾いて楽しめる体験型ミュージアムはそうしたスタッフの努力によって支えられているのです。

ここでしか出会えない往年の音色に触れる


来館者は家族連れからピアノに興味のある人やプロのピアニストまでさまざま。コンクール入賞歴もあり、何度も訪れているという小学生の母娘は、スタインウェイのコンサートグランドピアノが弾けるのが楽しみとのこと。
「家で弾いているピアノとは全然違う音色を体感できます。色々な時代の作曲家やピアノのことを時代背景も含めて丁寧に説明してもらえるので、ピアノの世界のイメージが膨らみます」と魅力を語ってくれました。

また、「菰野ピアノ歴史館」では歴史的価値のある古典ピアノを使ったコンサートイベントも折々に開催。プロのピアニストが再現した当時の音色を楽しむこともできます。(イベント詳細はホームページで随時紹介)さらに、この場所で演奏してみたいと希望する人にはイベントスペースとして開放してくれています。

「ここでしか出会えない音に自分の手で触れて、昔の楽器のことを知りながらピアノの楽しみを深めていってもらえたらと思っています」と岩田館長。

敷地内には自由に出入りできる「森のピアノ」も。ヤマハのアップライトピアノやカワイのグランドピアノが設置されており、ストリートピアノ感覚で弾く人たちの姿も観られます。

◇菰野ピアノ歴史館
住所 三重県三重郡菰野8474–181
TEL  059-324-4348
開館時間 10:00〜17:00(入館受付は16:00まで)
定休日  火曜・木曜 ※祝日の場合は開館 臨時休館日あり 年末年始 2022年12月26日〜2023年1月6日休
入館料  大人500円 高校生以下400円
HP 菰野ピアノ歴史館 https://piano-museum.com

この記事を書いた人
編集室「文音」
三重県在住フリーランス ライター&編集者。前職は情報誌編集長。観光スポットや企業、人物インタビューなどの取材を手がけています。

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